島田荘司です。
2005年も残り少なくなりました。みなさんお元気でおすごしでしょうか。
原書房、第三編集部の高橋部長が、私の担当を石毛編集者に交代した直後、「島田荘司大辞典」を作ろうと提案してくれたことがあります。島田荘司の全著作の内から、人名、地名、意味深い事物、名言、珍言、印象的な台詞、迷台詞の類を洗いざらい拾い出して、これらに理解の深い読者から募集した、楽しい、ものによっては面白おかしい説明文を付ける。
一方各作品や、ミステリー史における重要作、また本格シーンにとって重大なキーワードの解説は、これは評論家など専門家の協力を仰いで、真摯な論文とする。こちらをせいぜい充実させることによって、お遊び本と野次られる危険を防ぎます。
このような複合的なアプローチによる丹念な洗い出しで、作家島田荘司の感性の傾向とか、隠されていた思想性、作家性なども見えてくるのではないか、後世の研究家にとっても、意味のある書物ができあがるのではないか、そういった趣旨の提案でした。
面白い発案とは思いましたが、こちらも創作で忙しく、高橋氏も自分の仕事が忙しくなったことなどで、いつの間にか話は立ち消えになっていました。
ところが「奇想の源流」サイトのBBSで、「島田作品しりとりゲーム」が盛りあがり、2年近い時間経過の末、1000個の語彙リストが完成して、常連メンバーが島田大辞典の作成を目指す、と公言するにいたって、思わぬ方向からこの企画案が再浮上してきました。原書房石毛編集者も、そうならこの懸案はもう天の声と了解し、雄々しく「島田荘司大辞典」の制作を決意してくれました。
このような経過を経て、大辞典はいよいよ制作が決定される運びとなりましたが、なにぶん前例のない大刊行物であり、項目となる語彙の数は膨大です。書物のツカは分厚く、当然ながら小部数となりますから、通常の作り方をしたなら、定価が1万円を越えることは確実です。この単価をできるだけ下げ、赤字を避けるために、他方では商品価値を上げるための努力も必要となります。そのためには私自身も原稿を書く必要があるでしょうが、純然たる私の著作ではありませんから、プロ、アマを含めた多数の執筆メンバーの、緻密にして誠意的な団結が不可欠です。
採用原稿には謝礼が支払われますが、語彙拾い出し作業という初段階においては、定価を睨んだ際、どうしても読者のみなさんが手分けしてのヴォランティア活動が必要となってきます。そこで、まずはこの部分のご協力を、みなさまにお願いする次第です。
この本は、大きく売れることはないでしょうが、図書館や文学館、研究者たちの書斎には、長く遺っていくものとなります。その意味では、ささやかな歴史の制作です。原書房石毛編集者や私とともに、この大辞典制作プロジェクトへのご尽力を、切にお願いする次第です。
2005年11月21日 島田 荘司
|